健全なキャッシュフローを維持する経営ノウハウ

数字で見る歯科医院の未来

歯科医院を安定的に経営するためには、治療技術や集患策だけでなく、「お金の流れ（キャッシュフロー）」を正確に把握し、健全に保つことが不可欠です。売上が上がっているのに資金繰りに苦労する、というケースは少なくありません。これは、売上とキャッシュフローが必ずしも一致しないからです。

ここでは、歯科医院の院長先生が知っておくべき、健全なキャッシュフローを維持するための経営ノウハウを3つのステップで解説します。

「売上」と「入金」を明確に区別する

歯科医院の経営で最も陥りやすい罠の一つが、売上と入金の混同です。保険診療の場合、診療報酬が実際に入金されるのは、診療から数ヶ月後になります。このタイムラグを理解せず、売上をそのまま手元にあるお金だと考えてしまうと、資金ショートを起こすリスクが高まります。

月次で収支を把握する：毎月の売上だけでなく、「今月実際に入金された金額」と「今月実際に出ていった金額」を正確に記録・把握しましょう。

簡易的なキャッシュフロー表を作成する：複雑な会計ソフトを使わなくても、エクセルなどで簡単な表を作成し、毎月の収入と支出を記録する習慣をつけましょう。これにより、数ヶ月先の資金の流れを予測できるようになります。

健全なキャッシュフローを維持するためには、無駄なコストを削減することが重要です。しかし、コスト削減ばかりに目を向けて、必要な投資を怠ると、将来的な成長の機会を逃してしまいます。

固定費の見直し：医院の家賃、リース料、人件費といった毎月必ずかかる固定費は、経営を圧迫する大きな要因です。不要なリース契約がないか、業務効率を上げることで人件費を最適化できないかなど、定期的に見直しましょう。

変動費の管理：技工料や材料費といった、売上に応じて変動する費用も管理が必要です。技工所や材料業者と価格交渉をしたり、在庫管理を徹底したりすることで、無駄なコストを削減できます。

「未来への投資」を惜しまない：最新の医療機器やスタッフの教育、集患のための広告費などは、コストではなく「未来への投資」です。これらを削りすぎると、医院の競争力が低下します。投資対効果（ROI）を冷静に判断し、必要な投資は積極的に行いましょう。

健全なキャッシュフローを維持するためには、万が一の事態に備え、必要なときに資金を調達できる準備をしておくことも大切です。

早めの相談：資金繰りに不安を感じ始めたら、金融機関や税理士に早めに相談しましょう。問題が大きくなってからでは、選択肢が限られてしまいます。

融資制度の活用：銀行の事業融資や、国や地方自治体の公的な融資制度など、歯科医院が利用できるさまざまな資金調達の方法があります。それぞれの制度の金利や条件を比較検討し、自院の状況に合ったものを選びましょう。

キャッシュフローを可視化する：融資の際には、金融機関は必ずキャッシュフローを見ます。日頃からキャッシュフローを正確に把握し、可視化しておくことで、スムーズな審査につながります。

健全なキャッシュフローを維持することは、歯科医院の経営を安定させる土台です。日々の治療や患者さんとのコミュニケーションに追われる中でも、定期的に「数字」と向き合う時間を確保することが大切です。

これらのノウハウを実践することで、資金繰りに悩むことなく、本来の業務である「患者さんの健康を守る」ことに集中できるでしょう。