「うちのスタッフはみんな真面目だから、労務トラブルなんて起きるはずがない」
歯科医院の院長先生の中には、スタッフとの信頼関係に自信を持ち、このように考えている方もいるかもしれません。しかし、これは非常に危険な考え方です。スタッフが真面目であることと、労務リスクがないことは、全くの別問題です。
スタッフが真面目であればあるほど、不満を心の中に溜め込んでしまい、ある日突然、大きなトラブルとなって表面化することがあります。今回は、真面目なスタッフの背後に潜む労務リスクと、その予防策を解説します。
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#### 1. サービス残業が常態化しているリスク
真面目なスタッフは、「みんながやっているから」「院長に迷惑をかけたくないから」と、サービス残業を当たり前のこととして受け入れてしまいがちです。
**【なぜ起こるのか】**
*無言のプレッシャー: 院長先生が残業を強制していなくても、職場の雰囲気から「定時で帰るのは気が引ける」という無言のプレッシャーを感じている可能性があります。
*勤怠管理の不備: タイムカードを定時で押すように指示したり、出勤前の準備時間や終業後の片付け時間を労働時間としてカウントしていなかったりすると、真面目なスタッフほどサービス残業をしてしまいます。
**【予防策】**
*正確な勤怠記録: 勤怠管理システムを導入し、1分単位で労働時間を正確に記録しましょう。
*残業代の全額支払い: 働いた分の残業代は、1分単位で正しく計算し、全額支払うことを徹底しましょう。
*定時退勤の奨励: 「今日の業務はここまでで大丈夫だよ、定時で帰ってね」と院長先生から積極的に声をかけ、定時退勤しやすい雰囲気を作りましょう。
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#### 2. 医療ミスや患者クレームを一人で抱え込むリスク
真面目なスタッフほど、自分のミスを他人に知られることを恐れ、問題が起きた際に一人で抱え込んでしまう傾向があります。これにより、小さなミスが大きな医療事故に繋がったり、患者さんとのトラブルが悪化したりするリスクがあります。
**【なぜ起こるのか】**
*報告・相談しにくい雰囲気: 「こんな簡単なこともできないのか」と院長先生に怒られることを恐れている。
*マニュアルの不備: 問題が発生した際の報告フローや対応方法が明確になっていない。
**【予防策】**
*「報・連・相」がしやすい環境: 「ミスは誰にでもある。問題が大きくなる前に、必ず報告してほしい」と院長先生から日頃から伝えましょう。ミスを責めるのではなく、再発防止策を一緒に考える姿勢が大切です。
*インシデント・アクシデント報告書の活用: 問題が発生した際に、原因や対応策を共有するための報告書を作成・活用しましょう。
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#### 3. 不満や悩みを口にできず、突然辞めてしまうリスク
真面目なスタッフは、不満や悩みを「言っても仕方ない」と考えたり、「院長に迷惑をかけたくない」と思ったりして、心の中に溜め込んでしまいます。そして、ある日突然、我慢の限界を迎えて辞めてしまうことがあります。
**【なぜ起こるのか】**
*コミュニケーション不足: 院長先生とスタッフが個別に話す機会が少なく、本音を話せる関係が築けていない。
*公平な評価制度の欠如: 自分の頑張りが正当に評価されているか不安を感じている。
**【予防策】**
*定期的な個別面談: 月に一度、院長先生とスタッフがマンツーマンで話す時間を設けましょう。仕事で困っていることや、キャリアに対する希望などを聞くことで、不満の芽を摘むことができます。
*感謝の気持ちを具体的に伝える: 「いつもありがとう」だけでなく、「今日の〇〇の対応、すごく良かったよ」など、具体的に褒めることで、スタッフは「自分は認められている」と感じられます。
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#### まとめ:真面目なスタッフこそ、労務管理で守る
「真面目だから大丈夫」と安心するのは、非常に危険です。真面目なスタッフこそ、不満を一人で抱え込んでしまう傾向があるため、院長先生はより一層、労務管理に配慮する必要があります。
*残業代の正確な支払い**
*「報・連・相」がしやすい環境づくり**
*定期的な個別面談**
これらの予防策は、スタッフを信頼し、大切にする院長先生の姿勢を形にするものです。真面目なスタッフが安心して長く働ける職場を作り、医院の安定経営を目指しましょう。
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