「うちのパートさんは、みんな良い人だから大丈夫」
「正社員じゃないから、そこまで細かくしなくてもいいかな…」
歯科医院のスタッフ構成は、正社員だけでなく、パートやアルバイトといった非正規雇用スタッフも大きな割合を占めています。しかし、「正社員ではないから」と安易に考えていると、思わぬ労務トラブルに発展する可能性があります。
労働関連の法律は、正社員と非正規雇用スタッフの間に不合理な待遇差を設けることを禁じています。今回は、パート・アルバイトスタッフを雇用する際に、院長先生が注意すべき労務管理のポイントを解説します。
1. 労働条件通知書は全員に交付する
「正社員には雇用契約書を渡しているけど、パートさんには口頭で…」というケースは少なくありません。しかし、労働基準法では、雇用形態にかかわらず、すべてのスタッフに対し、労働条件を明示する義務があります。
必ず書面で交付する: パート・アルバイトスタッフに対しても、給与、労働時間、休日、有給休暇など、正社員と同様に労働条件通知書を交付しましょう。
雇用形態を明確に記載する:雇用契約書には、「パートタイム」「アルバイト」といった雇用形態を明確に記載しておくことが重要です。
ポイント:労働条件を明確にすることで、後々の「言った、言わない」のトラブルを防ぎ、スタッフからの信頼を得られます。
2. 「同一労働同一賃金」の原則を守る
「同一労働同一賃金」とは、正社員と非正規雇用スタッフの間で、不合理な待遇差を設けることを禁止するルールです。
待遇差の根拠を説明できるか?:例えば、正社員とパートの歯科衛生士が、同じ業務内容、同じ責任範囲で働いているにもかかわらず、給与や賞与に大きな差がある場合、その差の根拠を客観的に説明できなければなりません。
教育研修の機会:正社員だけでなく、パートスタッフにも業務に必要な教育や研修の機会を平等に提供しましょう。
ポイント:不合理な待遇差がないか、自院の給与体系や評価制度を今一度見直してみましょう。特に、賞与や各種手当(皆勤手当、通勤手当など)について、正社員とパートで差がある場合は注意が必要です。
3. 有給休暇の付与は法律上の義務
「パートだから有給はない」と誤解している院長先生もいますが、これは間違いです。パート・アルバイトスタッフも、勤務日数や時間に応じて**有給休暇が付与されます**。
*付与条件:
* 6ヶ月以上継続して勤務している
* 全労働日の8割以上出勤している
*付与日数:
* 週の所定労働日数や年間の勤務日数に応じて、付与される日数が決まっています。例えば、週3日勤務の場合、勤続年数6ヶ月で5日、1年6ヶ月で6日…といった形で増えていきます。
ポイント:正社員と同様に、パートスタッフの有給休暇の取得状況も年次有給休暇管理簿で適切に管理しましょう。
4. 社会保険の加入要件も確認する
「パートだから社会保険には入らなくていい」というのも間違いです。一定の要件を満たすパートスタッフは、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入させる義務があります。
*加入要件の目安:
* 週の所定労働時間が20時間以上
* 月額賃金が88,000円以上
* 雇用期間が2ヶ月を超える見込みがある
これらの要件を満たすスタッフを社会保険に加入させない場合、法律違反となります。
ポイント: 雇い入れる前に、勤務時間や賃金を相談する段階で、社会保険の加入についても明確に説明しておきましょう。
まとめ:パートスタッフも大切な「仲間」として
パート・アルバイトスタッフも、正社員と同様に、歯科医院を支える大切な仲間です。
労働条件を明確に伝える
不合理な待遇差をなくす
有給休暇を付与し、取得させる
社会保険の加入要件を確認する
これらのポイントを押さえて労務管理を行うことは、パートスタッフのモチベーションを高め、定着率を向上させることにつながります。結果として、安定した医院経営にも貢献してくれるでしょう。
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