労務管理の教科書!歯科医院の雇用契約書作成ガイド

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「雇用契約書って、どんな内容を書けばいいんだろう?」
「ネットのテンプレートをそのまま使って大丈夫かな…」

歯科医院を経営する上で、スタッフを雇用する際に必ず交わす**雇用契約書**。これは単なる事務手続きではなく、院長先生とスタッフが気持ちよく働くための「約束」であり、労務トラブルを未然に防ぐための重要な書類です。

しかし、その作成方法や記載すべき内容に不安を感じている院長先生も少なくありません。今回は、歯科医院の院長先生が知っておくべき、雇用契約書作成のポイントを解説します。

#### 1. 雇用契約書はなぜ必要?

雇用契約書は、法律で作成が義務付けられている「労働条件通知書」の役割も果たします。口約束ではなく、書面で労働条件を明確にすることで、**「言った、言わない」のトラブルを防ぎ、院長先生とスタッフ双方を守る**ことができます。

*スタッフへの安心感: 労働時間や給与などの条件が明確になることで、スタッフは安心して働くことができます。
*法的なリスク回避: 雇用契約書がない場合、労働基準監督署の調査で指摘を受けたり、スタッフから給与の未払いを訴えられたりするリスクがあります。

#### 2. 雇用契約書に必ず記載すべき10項目

雇用契約書には、労働基準法で定められた「絶対的明示事項」と、院内のルールを明記した「任意的明示事項」を盛り込む必要があります。特に重要な10項目を以下にまとめました。

1. **契約期間: 有期雇用(例:1年間)か、期間の定めのない無期雇用かを明記します。
2. **就業場所と従事すべき業務: 「〇〇歯科医院」という就業場所と、「歯科衛生士業務」など具体的な業務内容を記載します。
3. **始業・終業時刻、休憩時間: 労働基準法に則り、正確な時間を明記します。
4. **休日、休暇: 週の休日日数(例:週休2日制)、有給休暇のルールなどを記載します。
5. **賃金:
*給与の内訳: 基本給、各種手当(資格手当、皆勤手当など)を詳細に記載します。
*計算方法: 月給制か時給制か、残業代の計算方法も明記します。
*支払日と支払方法: 「毎月25日に銀行振込で支払う」など、具体的に記載します。
6. **退職に関する事項: 退職の申し出はいつまでに、どのように行うか(例:退職希望日の1ヶ月前までに書面で提出)を記載します。
7. **昇給、賞与、退職金に関する事項: 昇給の有無や、賞与・退職金の支給条件などを記載します。
8. **社会保険・労働保険: 雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険の適用状況を記載します。
9. **試用期間: 試用期間を設ける場合は、その期間(例:入社後3ヶ月間)と、試用期間中の労働条件を記載します。
10. **就業規則: 「当医院の就業規則に準ずる」と記載し、スタッフがいつでも就業規則を確認できるようにしておくことが大切です。

#### 3. 雇用形態ごとの注意点

正社員、パート・アルバイトといった雇用形態ごとに、特に注意すべきポイントがあります。

*パート・アルバイトスタッフ:
*労働時間と賃金: 労働時間や時給を明確に記載しましょう。
*社会保険の加入: 一定の要件を満たす場合は、社会保険に加入させる義務があります。
*「同一労働同一賃金」: 正社員との間で不合理な待遇差がないか確認しましょう。
*有期雇用のスタッフ:
*契約更新の有無: 契約を更新する場合の条件を明確に記載しましょう。例えば、「勤務態度や能力により、更新する場合がある」など。

#### 4. 雇用契約書作成のポイントと注意点

*専門家の力を借りる: 複雑な法律の知識が求められるため、社会保険労務士に依頼して作成してもらうのが最も確実です。
*スタッフに丁寧に説明する: 雇用契約書を一方的に渡すのではなく、内容を丁寧に説明し、疑問点や不安を解消しましょう。
*保管義務: 雇用契約書は、スタッフの退職後3年間は保管する義務があります。

#### まとめ:雇用契約書は、安心できる職場の第一歩

雇用契約書は、労務トラブルを防ぐための**「守りの経営」**であると同時に、スタッフに「この医院は、ルールを遵守する安心できる職場だ」というメッセージを伝える**「攻めの経営」**でもあります。

*絶対的明示事項を網羅する**
*雇用形態ごとの注意点を確認する**
*専門家の力を借りて、丁寧に作成する**

これらのポイントを押さえることで、あなたの歯科医院は、スタッフに信頼される、安心できる職場になるでしょう。

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