残業代、有給休暇…歯科医院でよくある労務トラブルQ&A

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「うちの医院でそんなトラブルが起きるなんて…」

そう思っていても、スタッフとの間には、給与や休みに関するちょっとした認識のズレから大きなトラブルに発展するケースが少なくありません。特に、歯科医院では少人数のチームで働くことが多いため、一度こじれると関係修復が難しくなることもあります。

今回は、歯科医院で特に発生しやすい労務トラブルについて、よくある質問とその答えをQ&A形式で解説します。日頃の疑問や不安を解消し、未然にトラブルを防ぎましょう。

Q1. 「院長、最近残業が多いのですが、残業代は支払われるのですか?」
A. はい、支払われます。1分単位で正確に計算し、全額支払いが必要です。

労働基準法では、法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超えて労働させた場合、その時間に対して割増賃金(残業代)を支払う義務があります。歯科衛生士や受付スタッフなど、どの職種であっても例外はありません。

「お昼休みに電話対応した」「終業後の片付けに15分かかった」など、細かな時間も労働時間に含まれます。たとえ数分であっても、積み重なれば大きな額になります。手作業での計算ミスや、意図的な未払いは、スタッフからの信頼を失い、労働基準監督署への申告に繋がる可能性が高いです。

対策: 勤怠管理システムを導入し、1分単位で正確に労働時間を記録しましょう。給与計算を自動化することで、計算ミスを防ぐことができます。

Q2. 「有給休暇を申請したら、院長から『今は忙しいから無理だ』と言われました。どうしたらいいですか?」
A. 院長には「時季変更権」がありますが、基本的にスタッフの希望を尊重すべきです。

労働基準法では、スタッフは原則として希望する日に有給休暇を取得できます。院長には、事業の正常な運営を妨げる場合にのみ、取得時期を変更できる「時季変更権」が認められています。しかし、これは「今月は忙しいから」といった漠然とした理由ではなく、「代わりの人員を確保できないため診療がストップしてしまう」など、客観的に正当な理由が必要となります。

また、2019年4月からは、年10日以上の有給休暇が付与されるスタッフに対し、年5日間の有給休暇を確実に取得させる義務があります。

対策: 事前にスタッフ全員の有給休暇取得希望日をヒアリングし、シフト調整を工夫しましょう。スタッフが気兼ねなく有給休暇を取れる雰囲気作りも大切です。

Q3. 「急に辞めることになりました。退職金はもらえますか?」
A. 退職金制度は法的な義務ではないため、就業規則で定められている場合にのみ支払われます。

退職金の支払いは、法律で義務付けられているものではありません。そのため、退職金制度があるかどうか、また支給要件や金額は、医院の就業規則によって異なります。就業規則に退職金に関する規定がなければ、原則として支払う必要はありません。

しかし、口頭で「退職金は出る」と約束していたり、過去に支払った実績があったりする場合は、トラブルに発展する可能性があります。

対策: 退職金制度を導入するかどうかを明確にし、就業規則に明記しましょう。これにより、スタッフとの認識のズレを防ぐことができます。

Q4. 「院長から何度も個人的なことで怒られます。これってパワハラですか?」
A. 業務上の指導と、個人の人格を否定するような言動は明確に区別すべきです。

パワハラの定義は、「優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動により、就業環境を害すること」です。

業務上の指導はパワハラにはあたりませんが、感情的に怒鳴る、人格を否定するような発言、他のスタッフの前で一方的に叱責するなどの行為は、パワハラと見なされる可能性が高いです。

対策: 院長先生自身がハラスメントに対する正しい知識を持つことが重要です。スタッフを指導する際は、感情的にならず、具体的に「何が問題で、どう改善すべきか」を伝えましょう。

まとめ:日頃のコミュニケーションがトラブルを未然に防ぐ
労務トラブルの多くは、日頃のコミュニケーション不足や、ルールに対する認識のズレから発生します。今回ご紹介したQ&Aを参考に、自院の労務管理を見直してみてください。

スタッフとの信頼関係を築き、働きやすい職場を作ることは、結果として医院の成長に繋がります。もし不安なことがあれば、専門家である社会保険労務士に相談することも検討してみましょう。

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