「働き方改革」と聞くと、大企業の話だと思っていませんか?実は、歯科医院のような中小企業にも深く関わる、非常に重要なテーマです。知らないまま放置すると、思わぬ法的なリスクを抱えるだけでなく、スタッフの不満を増大させ、離職率を高める原因にもなりかねません。
今回は、歯科医院の院長先生が知っておくべき「働き方改革」のポイントと、労務管理への影響について解説します。
1. 残業時間の罰則付き上限規制
「働き方改革」の最も大きな変更点の一つが、残業時間の罰則付き上限規制です。これまで中小企業には猶予期間がありましたが、現在は大企業と同様に厳格なルールが適用されています。
原則: 月45時間、年360時間を上限とする。
臨時的な特別の事情がある場合: 年720時間、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)が上限。
これらを超えて労働させた場合、労働基準法違反となり、罰則の対象となります。
【今日からできること】
まずはスタッフの勤怠管理を見直し、正確な労働時間を把握することが重要です。勤怠管理システムを導入するなどして、労働時間を可視化しましょう。
2. 年次有給休暇の取得義務化
2019年4月以降、すべての事業主は、年10日以上の年次有給休暇が付与されるスタッフに対し、年5日間の有給休暇を確実に取得させる義務があります。
これは「スタッフが申請するのを待つ」だけでは不十分です。医院側が時季を指定して取得させなければなりません。このルールを知らずにいると、労働基準法違反で罰則が科される可能性があります。
【今日からできること】
毎年、スタッフに時季指定の希望を聞き、計画的に有給休暇を取得してもらう。
院内で有給休暇の取得計画表を作成し、スタッフ間で共有する。
3. 同一労働同一賃金の原則
「同一労働同一賃金」とは、正社員と非正規雇用労働者(パートタイム、アルバイト、有期雇用など)の間で、不合理な待遇差を設けることを禁止するルールです。
例えば、正社員の歯科衛生士と、パートタイムの歯科衛生士が、同じ業務内容、同じ責任範囲で働いているにもかかわらず、給与や手当、教育研修の機会などに差がある場合、これは「不合理な待遇差」と見なされる可能性があります。
【今日からできること】
雇用形態にかかわらず、業務内容や責任範囲、貢献度に応じた待遇になっているか、院内の給与体系や評価制度を見直す。
非正規スタッフにも、正社員と同様にスキルアップの機会を提供できないか検討する。
まとめ:働き方改革は「経営改善」のチャンス
「働き方改革」は、単なる法改正ではありません。これを機に労務管理を見直すことで、スタッフの労働環境を改善し、離職率を下げ、ひいては医院全体の生産性を向上させる経営改善のチャンスと捉えることができます。
労務リスクの低減: 法律を遵守することで、労基署からの是正勧告や、スタッフとのトラブルを未然に防ぎます。
採用力アップ: 「働きやすい歯科医院」として認知されれば、優秀な人材の獲得につながります。
スタッフのモチベーション向上: 適切な労働時間、休暇、公平な評価は、スタッフのやりがいを高めます。
働き方改革に対応することは、持続可能な歯科医院経営のために不可欠です。まずは、自院の労務管理が現在の法律に適合しているか、一度チェックしてみることを強くお勧めします。
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